[第1回] 「時」をめぐる旅 パリ、そしてロンドン 世界の「時」の中心はどこか。グリニッジ標準時(GMT)を思い浮かべて、ロンドン、と答える人が多いかもしれない。実は、パリである。GMTにとってかわった現在の世界標準時である協定世界時(UCT)は、パリにある国際度量衡局(BIPM)から世界に向けて発信されているからだ。(論説委員 辻篤子) BIPMは、「時」だけでなく、重さや長さなどの単位を扱う国際機関だ。パリ郊外にある本部は、その名前から機能本位の無味乾燥な建物を想像したくなるが、全く違う。セーヌ川を見下ろす小高い丘の上に立つ、もとは王族の館だったいう瀟洒なシャトーである。メートル法の推進をめざしてメートル条約が締結された1875年に設立された。フランスは18世紀末にメートル法を提案するなど、単位の統一で世界をリードしてきた。BIPMの本部がパリに置かれるのも自然の成り行きだったに違い