江戸時代の経済システムの研究が進んでいる。なかで株仲間の研究が意義深い。最近の日本はライブドアや楽天や村上ファンドの敵対的買収とその成功と失敗がやたらに話題になっているけれど、当たり前のことではあるが、江戸の株仲間はそんなものとはまったく異なっていた。 はやくに宮本又次が『株仲間の研究』(有斐閣)で指摘していたように、徳川社会にはむろん成定商法などなかったから、仲間のあいだでなんとか訴訟や仲裁を工夫して未然に事態を解決しようとしていた。「仲間」とはそういう意味である。では、適当に談合していたかというと、そうではない。よくよく見ると、そこには市場経済のシステムの萌芽がさまざまに読みとれる。本書はそこに分け入った。とくに天保12年(1841)の株仲間解散令と嘉永4年(1851)の問屋組合再興令に注目した。 著者の岡崎哲二は東大で日本経済史と制度分析を掘り下げて、スタンフォード大やフランス社会学