丸田祥三氏の写真集「棄景」との出会いは衝撃的だった。たしか1990年代の半ば,写真集が出て間もない頃だったと思う。 それまでも,香港の九龍城の写真集や,長崎の軍艦島(端島)の写真集が出ていて,私の別ブログ『写真撮っけど,さすけねがい?』を見ていただいている人ならば,私がそれらの写真集に共感を覚えるであろうことは容易に想像が付くはず。 しかし,丸田祥三氏の「棄景」には,それらとは明らかに違う“何か”が感じられたのだ。その“何か”が,上手く説明できなくてもどかしい……。 当時は,堀淳一氏の「地図を歩く」「地図の楽しみ」などの影響で,廃線跡歩きをしていたことや,廃止と直面しながら走るローカル私鉄や路面電車に惹かれる気持ちが,どこかで「棄景」に通底していたのかもしれない。 2000年以降の大波のようなレトロ・ブームや廃墟趣味ブームとは違って,1980〜90年頃のレトロ・ブームは,まだ弱々しいマイナ