「とてもじゃないが昨日は運転できなかったよ。だから商売にならなかった」 ラガーディア空港からホテルまでの移動に利用したタクシーの運転手は言った。24年前にインドから移住したという彼に、翌日からの取材場所であるサウスブロンクスについて訊いてみる。 「相当、危ないエリアだよ。特に夜は行きたくないねぇ」 「相変わらず、ゲットー(貧民窟)なの?」 「場所にもよりけりだな。かなり街が整備されはした。でも、年間に450人とか500人がガンで撃たれるような地域だよ」 「ギャングの抗争?」 「そうだね。あとはドラッグ絡みかな」 明日、そこに行くのだと告げると、初老の男はハンドルを握り締めたまま、驚いたような顔で振り返った。 「気を付けなよ。あんた、まだ若いんだろう。そうそう、明日も雨に混ざって雪が降るらしいよ。かなり冷え込むってさ」 「貧民」として生きている、オバマと同世代の世界王者 運転手が話した通り、