思索は事件をキッカケに始まる。自分の書いたものを振り返ってみると、どうもそのようである。その事件とは、ミートホープに段ボール肉まん、白い恋人、比内地鶏…あれ、詐称事件ばかりではないか。そんな事件ばかり起きたヘンな年だったのかとも思うが、そんな事件にばかり反応する自分こそヘンなのではと思い直したりもする。 で、懲りもせず「船場吉兆」である。やはり詐称事件の一種なのではあるが、これまでの事件とは感触が違う。ミートホープや比内地鶏の事件には衝撃を覚えつつも、心の片側で「さもありなん」「どーせ氷山の一角だろ」という思いがあった。しかし、船場吉兆に関しては「まさかお前が」という驚きと失望感が強く、「やっぱりね」と単純に切り捨てることができないのである。 乱発が招いたもの 船場吉兆の母体に当たる吉兆は、かの湯木貞一氏が1930年に創業した高級料亭である。それから50年もの年月をかけてその名を高め、今日