勢いのある「ハンニバル戦記」から一転、あれほど著者が忌避した世界史の教科書のような停滞ぶり。ポエニ戦役を勝ち抜いた後、ローマに訪れた内紛と混迷の時期がだらだらと書かれている。 好き嫌いが激しいのか、ローマ史上では超重要な人物、マリウス、スッラ、ポンペイウスの書き込みは淡々としており、著者の思い入れはさしてないことが分かる。分かりやすい書き手なので安心して読める。この調子だと、カエサルは弾けるんじゃないだろうかと予想する(←的中!)。 「勝者の混迷」の読みどころは、出来事の分析ではなく、塩婆史観を愉しむところにある。つまり、"自称"シロウトの「~ではないか」「もし~ならば」から、ローマだけでなく、それを語る人をどう評価しようとしているのかを推理するワケだ。このへん↓が、たいへん面白かった。 ■ローマ人と義理人情(文庫版6巻p.167) ローマ人が創り出した法の概念と、義理人情は矛盾するではな