裁判で使用した大量の資料を示す八田氏。検察側が控訴したため、再び裁判対策に追われる日々が始まる〔PHOTO〕鬼怒川 毅 取材・文 田中周紀(ジャーナリスト) 「忘れもしない2008年12月16日、突然マルサが東京の私の自宅や金沢の実家に強制調査に入ったのです。給与明細はもちろんのこと、パソコンや私的な手紙まで持っていかれた。そのときの驚きは、言葉では表せません」 スイスの大手金融機関「クレディ・スイス・グループ」(CSG)の日本法人「クレディ・スイス証券」で外国債券部長を務め、「米住宅債権担保証券」というハイテク金融商品の専門家だった八田隆氏(49)。報酬の一部として受け取っていたCSG株式の利益約3億5000万円を隠し、約1億3200万円を脱税した疑いで、 '08年12月、東京国税局査察部―泣く子も黙るあの〝マルサ〟の強制調査を受けた。 その後3年にも及ぶマルサの聴取、東京地検の捜査の末