ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (64)

  • あこがれと可能世界 - 傘をひらいて、空を

    仕事の関係者との飲み会で、共通の知りあいの話になった。私はその女性がたいへん好きで、「あの人、綺麗ですよねえ。私あの人が来る会議がたのしみなんですよう」と言った。そうしたら、そこにいた旧知の男性からあきれられた。 「昔から不思議なんだけど、女同士でそういうこと言う人ってときどきいるよね、なんで?異性愛者なのに言うよね、あの人綺麗とか可愛いとか。意味わかんない」 そんなのこっちが呆れる。あこがれとかないの?「恋愛対象じゃないけど、すてき」っていうのはないの?「ああいうふうになりたい」とか「自分とはぜんぜん違うタイプだからこそ目がいってしまう」とか。 そういうふうに抗議したら、彼はしばらく考えて、いくつか私に質問をし、それからこう言った。 「もしかすると、あなたたちは『そうであったかもしれない自分』に敏感だから、同性にそういう感覚を持つのかもしれない。こうする習慣をつけていたら、こういうふうに

    あこがれと可能世界 - 傘をひらいて、空を
    LethalDose
    LethalDose 2010/02/08
    他人のいいところを見つけるのが上手な人なのだと、他のエントリも含めておもう。自分自身は他人のようになれると想像できないほうなのだけど、環境が羨ましいときはある。
  • 「私はいつか嫉妬する」 - 傘をひらいて、空を

    彼女は四十一歳になった。彼女はカメラマンで、ふたりの後輩を指導しながら、現場でカメラを回している。回すというのは動画を撮るときの表現で、静止画のカメラマンのことはよくわからない、と彼女はいう。 職業的にカメラを回すというのはどういう種類の経験なのか、私は尋ねる。現場に行く前はなにをするのか。どんな人たちと一緒に、どんな準備をするのか。判断しなければならないことはなにか。それによってなにが影響されるのか。 彼女はそのいちいちに答えながら、それらのプロセスで自分が感じることをいきいきと語る。短時間での判断を要求されることが多く、それに自信を持てるようになったら一人前だということ。でも勉強すれば正解が出るわけではないので、「ほんとうはわからないのに断定する詐欺師みたいな度胸」が必要だということ。機材を扱うためには、腕や脚だけでなく、背筋を上手に使わなければならないこと。 ファインダにうつる映像は

    「私はいつか嫉妬する」 - 傘をひらいて、空を
    LethalDose
    LethalDose 2010/02/05
    仕事の性質上、この彼女の気持ちはよくわかる(つもり)だけど、自分が受け取ったものを返さなければ、という思いもあるかな。そのせいで仕事をやめる踏ん切りはつかないのだけど。
  • あなたの美しい欠落 - 傘をひらいて、空を

    他人に興味をもつとき、美点より欠けているところがフックになることが多い。欠けているところを補う工夫にはその人のものの考え方や美的感覚があらわれるし、自分の欠落を認めるプロセスをうまく消化した人には、特有の寛容さがあるように思う。 私の友だちに、自分がある種の傷を負ったときのことはなるべく隠蔽し、話題にのぼらないように細心の注意を払っている人がいる。彼女は会話のなかにつらい記憶と結びついたものごと(それ自体はなんの変哲もないことが多い)が出てこないように、じつに注意深くコントロールしている。私は彼女のコントロールの手つきを目撃するたび、そのあまりの巧みさと優雅さに驚く。たいへんな表現力と話術だと思う。そうして、それを実現しているのは、特定の話題の周辺には自分はもとより他者の手も触れさせたくないという、あからさまな狭量と脆弱だ。 彼女の夫はさらに徹底している。彼は傷ついたときのことを忘れてしま

    あなたの美しい欠落 - 傘をひらいて、空を
    LethalDose
    LethalDose 2010/01/28
    「あなたにそれが見えないのは、単にそれがあなたの好みのかたちの欠落じゃないからだと思うよ」するどい。
  • テレビみたいな人 - 傘をひらいて、空を

    彼はわりに早い時期から「他人と世界は一定以上理解することができないものだ。なにか特定のものを深く理解する動機もない。適当に表面をさらってうまくやっていけばいい」という信念を持っていた。 だから彼の努力はすべて、最大多数にとっての価値を獲得することに向けられた。有名な大学、有名な会社、花形とされる部署。およそ誰とでも話せる人当たりのよさ、相手の求めるものを察知し、その場に適応する能力。どんな分野の話題でも十分は話せる広範な、しかし掘り下げられることのない知識。 彼はだから、「俺はテレビだ」と言う。テレビは多くの人にとって必要な、自明の存在であり、簡単にチャンネルを変えることができ、深みがないからこそ接する上でのストレスが少なく、ときに華やかでセンセーショナルで、でも決して、与えられた大きな規則を破ることはない。 「それが物足りないこともないわけじゃない。でも路線変更はしない。なにしろテレビ

    テレビみたいな人 - 傘をひらいて、空を
    LethalDose
    LethalDose 2010/01/16
    傘をさんがこの彼にとって「他人」ではない、と婉曲に伝えたいだけだったりして。