死んではいけない、師匠がその言葉を言ったのには訳があった。 以前に師匠の生い立ちを聞いたことがあるが、その時に言っていたことは、昔、師匠のお父さんも事業をしていて、多額の借金を残した後は、蒸発をして行方不明になったとのことだった。 そしてその後、お母さんは、その残された借金でノイローゼになっては、ある日、首吊り自殺をしたそうだった…。 死ななければなんとかなる、と強く言っていた師匠は、なんだか少し寂しそうな、そんな口調で私たち2人にそれを語りかけていた。 その後、私も母も、そこには触れてはならないと思っては、少し話の方向を無理やりに変えていった。 私は母に、ちょっと笑いながらこう言った。 「でもさ、お母さんもあの時って、この船は沈まない、沈ませないってお父さんは言いよったけど、すでにもう沈みかけてるやん、もうダメやろ?って思いよったやろ? 笑」 私がその笑いの方向に話を振った