トルコは2019年10月9日、北東シリアに越境攻撃を開始した。その標的は、トルコがテロ組織と見なすクルド民主統一党(PYD)である。トルコはPYDがシリア側からトルコを攻撃することを防ぐため、国境沿いに幅30km、長さ480km程度の安全地帯を設定することなどを目的としている。トルコの空爆の対象は事前の諜報活動で特定したPYDの地下壕・トンネルや兵器庫であるが、民間人犠牲者の発生は不可避である1。このような事態はなぜ発生し、どのような顛末を迎えるのか。本稿はその答えへの糸口を、トルコおよびPYD双方の過去の誤算と現在の打算に求める。なお、過去40年にわたるクルド人武装勢力とトルコ国軍の紛争の経緯については文末の「解説」を参照されたい。 PYDを標的としたトルコの過去3回のシリア侵攻はいずれも2016年以降に行われた(表1)。トルコにとってのPYDの脅威がこの時期に顕在化した大きな理由は、シ
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