きわめて抽象度が高く、それゆえに近寄りがたい印象がもたれている圏論。その圏論のもわーっとしている入口へ案内します。とはいえ、圏論のきちんとした定義をわずかな文章で示してもわかりにくいばかりなので、ここではまず小さな例で雰囲気をつかんでください。興味がわいたら、最後に紹介する文献をどうぞ。 矢印ばっかり描いているのだ 数学では普通、「集合 A があって、その元 a ∈ A があって……」というように、集合ベースで話が進みます。圏論というのは、代わりに対象と射を使う数学のコトバです。ぱっと見でいえば、「矢印ばかり描いている」という印象になるでしょう。 次の図を見てください。 X、Y、Z、X ⊔ Y というのが対象で、その間に描いてある矢印が射です。 圏論ではこの図を、 X、Y が与えられたとき、 特別な X ⊔ Y と、κ1、κ2 がとれる。 どう特別かというと、ほかに Z とf、g というも