クジラ類が海岸に打ち上げられる現象を「ストランディング」と呼ぶ。日本国内では、年間300件近くが報告されている。原因は諸説あるが、人間社会の発展も一部に関与しており、年々その割合は増加している。これまで20年以上、国立科学博物館(以下、科博)の研究者として海の哺乳類の解剖調査に携わってきた田島木綿子さんに、海獣の魅力、研究を通じて学んだこと、人間との共存の在り方について聞いた。 「標本収集」のためだけでなく 未来を見据え、共生の道探る ――クジラ類を研究対象に選んだのはどうしてですか きっかけは、シャチとの出会いです。獣医師になるため大学に進んだのですが、進路に迷い、手に取った本が『オルカ 海の王シャチと風の物語』(水口博也著)でした。そこに描かれた野生のシャチに魅了され、カナダ・バンクーバーを訪ねました。そこで目にした野生のシャチの完璧なフォルムと白黒が織りなす見事な色合いにノックダウン