漫画家の属性を強引に「話」と「絵」に分類した場合、藤田和日郎さんは、むしろ絵こそ達者であり、話は一芸特化の人であると言えるのではないか。 藤田さんの「絵」の属性を説明するのに『邪眼は月輪に飛ぶ』を持ち出してみると、以下のように、まったく非の打ち所が無い「絵の人」なのである。あと、女の子を可愛く書くのに情熱を注ぎまくりな点や、老若男女を描き分けられるあたりも。 登場人物の感情を一切の誤り無く読者に伝えられる「表情」。 フクロウからデザインを殆ど弄らずに禍々しさを湛えた《ミネルヴァ》の「造形」。 最終話の魚眼レンズっぽく右下に東京タワー、左上に月輪を描いたコマの「構図」。 鵜平の最後の一撃におけるアシスタントが筆入れを拒むほどの「迫力」。 対して「話の人」としてみた場合、作品全体の圧倒的な力からすれば若干の瑕疵と言えないことも無い点もある。 コメディパートで和ませて緩急をつけることはできるが、