最初はジェイン・オースティンの原作かと思っていたが、なんか評判なので読んでみたマンガ「エマ」はひどい。あれが当時の英国の階級意識を正確に描いていると思われるようでは困る。「身分違いの恋」という設定にはなっているが、あんな生易しいものでないことは、フォースターの「ハワーズ・エンド」を読んだって分かる。だいたい「二つの階級がある」などと父親が言っているが、実際には上流、アッパーミドル、ロウワーミドル、下流と最低四つには分かれるのだ。だいたい当時の英国の中流の男が、メイドを「かわいい」と思う意識自体、存在しない。しょせんは「シンデレラ」並みの夢物語である。ああいうマンガを本気にしている人は、新井潤美『階級にとりつかれた人びと』(中公新書)、『不機嫌なメリー・ポピンズ』(平凡社新書)を読んで勉強するように。むしろ志賀直哉の「濁った頭」あたりが、ちょうど、中流の青年と下女との恋愛(まがい)の実相を描
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