→紀伊國屋書店で購入 「複製技術を介した音楽体験を考察する」 私は本書にインタビューが載っているミュージシャンをひとりも知らず、 しかもテクノやアブストラクト・ヒップポップやミュジーク・コンクレートなるジャンルにもうとい。 書評するのははなはだおこがましいのだが、 それでもなにがしか書いてみたいと思ったのは、 「複製品」におおわれた私たちの日常について 思考が広がっていく喜びがあったからである。 現代生活の中で、身体が刻印された生な芸術品を数え上げるのはむずかしい。レコード、写真、映画など、繰り返し鑑賞できる複製品に取り囲まれている。 本書はそうした状況を前提に音楽を論考したものだ。 複製芸術とオリジナルのちがいを問うのではなく、 聴くことをも含めた音楽的体験を問題にしている。 私たちは二重化された「死の空間」に身を映しながら音楽を享受している、と著者は言う。 音がスコアになったときに身体