「スラムダンク」「バガボンド」「リアル」と、メガヒットを連発する井上の創作活動を支えているのは「手に負えないことをやる」という信念だ。 例えば、「バガボンド」の連載途中から使い始めた毛筆。筆は、漫画家が一般的に用いるGペンに比べて毛先が柔らかいため、予期せぬ動きをする。井上は、あえて自らの感覚を筆に委ねることにより、よりナマっぽい絵を生み出した。さらには、原稿を飛び越えて巨大な和紙に挑み、東京・熊本でマンガ展を開催。大反響を呼んでいる。 連載を続ける中で、井上が最も悩み苦しむのが「ネーム作り」と呼ばれる作業だ。ネームとは、物語の展開を考えてコマを割り、絵の構図やキャラクターの動き・セリフなどを大まかに書き記したもの。ここで、漫画のすべてが決定されるという。 ネームを考えるのは、お気に入りの喫茶店。そこで、井上はキャラクターを「迎えにいく」のだという。キャラクターが何をしたいのか、どんな