北海道滝川市の元暴力団組員の夫婦らによる生活保護費不正受給事件をめぐり、市の幹部5人に、夫婦が介護タクシー代として詐取した総額約2億4千万円の損害賠償を求めた住民訴訟。自治体で福祉に携わる職員の過失を認めた札幌地裁判決は、漫然と多額の保護費を支出し続けた福祉行政に警鐘を鳴らした。なぜ常識では考えられない不正受給がまかり通ったのか。そこには、事なかれ主義と「不作為の連鎖」に陥った自治体職員の姿が浮かび上がる。羽振りの良い生活 元暴力団組員の夫婦と家族が住んでいたのは、北海道滝川市中心部から約3キロ離れた閑静な住宅街の貸家だった。延べ床面積約130平方メートルの2階建てで、広い庭とガレージも備える。 「なんとなくいやでしょ」。夫婦の後に入居した女性(69)が居間の天井を指すと、飲食店などを怪しく演出するブラックライトが埋め込まれていた。家賃は同市の生活保護世帯の上限家賃(3万8千円)を上回る7