研究があまり進んでいない「窃盗症」 窃盗癖は、ギャンブル障害、インターネット使用障害、買い物嗜癖、性嗜癖、摂食障害などとともに、精神医学的には行動嗜癖の一つとみなされる。精神障害としての常習窃盗、クレプトマニア(Kleptomania)は、古くからある病名であるが、行動嗜癖のなかでも、最も治療体験と研究の蓄積が少なく、実態の解明が遅れている。 クレプトマニアの邦訳名としては、従来、「病的窃盗」「窃盗癖」などが使われてきたが、DSM-5では、日本精神神経学会の訳(2014(平成26)年)によって新しい病名、「窃盗症」が採用された。 常習窃盗を大雑把に3種類に大別すると、①経済的利益のために金目の物品や金銭を盗む職業的犯罪者、②飢えて食物や生活必需品を盗む貧困者、そして③金があるのに些細なものを盗む病的窃盗者、ということになる。もちろん現実には、3類型の境界域、混在型、移行途上など、分類困難な