もはやライトノベルというジャンルは“たまたま出版しているレーベルがライトノベルのレーベルだった”あるいは“書店がライトノベルだと思って棚に並べた”そんな緩い枠になっていると思う。何しろ、読者層の下を中高生に設定して、文章を読みやすく書いていれば、なんでもライトノベルになってしまうのだから。 今回紹介する江波光則『ボーパルバニー』(ガガガ文庫)は、ライトノベルの新たな世界の広がりを見せてくれた。この作品はライトノベルというジャンルで、圧倒的なピカレスクを展開しているのだ。 表紙を見て思ったのは「なんかエロいことが起こる展開なのか」という予断。確かにエロい展開はある。けれども、それは決して重要なことではない。この作品世界には、善人などいない。すべてが悪党であり、血なまぐさい匂いに満ちた世界である。学園や異世界とは違う悪徳に満ちた青春が、ここにはあるのだ。 物語の世界はリアルな現代。主人公の若者