5年暮らしたスペインではメディアや出版界でこれほど戦術の話しや書籍を見聞きしたことがなかった。一方の日本では、周知の通りこれだけメディアや書店に戦術関連の記事や書籍が溢れ返っている。しかし、「世界に類を見ない」と言っても過言ではない戦術好きの日本サッカー界がピッチ上での戦術レベルで世界との差を縮め、追いつき・追い越せの状況を作っているかというと私は逆に引き離されていると考えている。自戒を込めて表現するならば、「日本のサッカーメディアで語られている戦術系の話しや本はほとんどが役に立たない机上の空論」なのだ。そうした中、ようやく本物の、価値ある戦術本が登場したというのが本書を読んでの第一印象だ。しっかりと言葉の定義付けを行いながらも教科書的な堅い内容には仕上がっておらず、日本とスペインの両国で指導経験のある坪井氏と森氏が日本のサッカー事情に合った形にカスタマイズする努力を施しており、読み物とし