博士人材の不足や、多様性の欠如 ——。日本のアカデミアが抱える課題は根深い。 2022年に主要8部局の教授・准教授ポストでの女性限定の公募や、入試改革における「女子枠」の導入を決定した東京工業大学。 前編に引き続き、東工大の益一哉学長に日本のアカデミアが抱える「人材問題」、そして昨今議論が進んできた、アカデミアや理工系大学に女性を増やす取り組みについての考え方を聞いた。 —— 研究人材の待遇面の悪さは、日本の科学力を衰退させている要因の一つのように感じています。この点、益先生はどう感じていますか? 益:日本は、研究者や研究者になる人材(博士課程の学生)だけではなく、そもそも人に投資をしないですよね。 例えば、産業界と共同研究をするとお金は出ます。ただ、極端な話、実験装置などの「もの」に対する「直接経費」にしか出ないんです。実際に研究を進める博士課程の学生の給料を払う必要性が認識されていない