1983年、任天堂がファミリーコンピュータを発売した年、幼稚園の年長さんで6歳の僕は友だちのキン消しを盗んだ。どうしてもキン消しが欲しくて、でも親はキン消しを買ってくれなくて、友だちの家から勝手にキン消しを持ち出した。6歳にして、立派な泥棒だ。 盗んだキン消しは家に持って帰れなかった。親にどこで手に入れたか問い詰められるから。それにものすごく後ろめたかった。身近に置いて置くと、仲の良い友だちを裏切った罪悪感で押しつぶされそうになるから。どこか離れた所に置いておきたかった。それで、住んでいた社宅の廊下に置いてあったプランターの下に、ビニール袋に入れて隠した。誰も知らない秘密の場所だと思っていた。人の家のプランターなのに。 一度キン消しを盗むと、次はロビンマスクが欲しくなり、その次はステカセキングが欲しくなる。僕は複数の友だちから、自分の欲しいキン消しを次々と盗んで、プランターの下に貯めていっ