バッタ博士・前野ウルド浩太郎。愛するサバクトビバッタを求め、アフリカに渡った男。なのに、バッタがいなかった。収入どころか失職の、いや自己存在の危機。しかしバッタ博士は負けない。ここはひとつ、バッタ以外の仕事を自分でつくってみせましょう。そう、研究者らしい方法で。 本場に来たのにバッタが消えた 魚がいなくなったら漁師はいったい何をするんだろう? 病気が無くなったら医者は何をするんだろう? 社会で働く誰しもが、仕事が無くなり、その職業の存在価値が疑われる可能性におびやかされているのだが、まさか自分がそんな目に遭うとは夢にも思わなかった。 9月、モーリタニアは本来ならば雨季になり、乾燥した砂漠が潤う。ところが、赴任初年度の2011年、異常気象で雨が降らなかった。建国(1960年)以来の大干ばつに見舞われ、バッタのエサとなる新しい緑が芽吹くことはなく、バッタが忽然と姿を消した。なんということだ。野