娘のあくびが大切にしていた壷が割れてしまった。 犯人、いや犯猫はクー坊だ。クー坊が棚から落としたのだ。 玄関の方でパリンと大きな音がして、クー坊はぼくの部屋に逃げ込んできた。まったくどうしようもない悪戯っ子だ。 でもあくびの奴は怒らない。「割れちゃったものはしょうがないよね!」だって。もう小学六年生になるあの娘が、怒ったり、かんしゃくを起こしたり、わがままを言って大人を困らせたりするところ、ぼくは一度も見たことがない。いつも鼻歌を歌ってる感じで機嫌のいい子なんだ。だからぼくは彼女のこと、生まれてから今まで一度も叱ったり注意したりしたことがない。 本当の話、我が娘ながら(我が精子で出来た子ながら)彼女のことちょっと本気で尊敬してる。あの娘、ぼくよりもずっと出来物だ。 「くっつければなんとかなるから接着剤が欲しいわ」 彼女がそう言うんで、いっしょにホームセンターへボンドを買いに行った。そして彼