「君くらいの書き手なんて、山ほどいるんだよ。君がいなくたって何も変わらない」 僕はその言葉を、日当たりが悪くジメジメした部屋の片隅にうずくまり、いくども反芻していた。僕くらいの書き手なんて、山ほどいる。僕がいなくっても、何も変わらない。 その通りだ。 僕は、僕が消えても何も変わらないのを知っている。始める前から知っていた。僕の書く拙い文章では、世界を変えられたりはしない。吹けば飛ぶような知性の端切れでは、この場所を変えることすら、とうてい出来やしない。 才能もない。消えても何も変わらない。 ならば、僕はなぜ生まれて来たのだろう。日々、ブックマークしブログを書くのだろう。 他人の才能を際立たせるため? 刺し身のツマのように才能を引き立てるため? 人は才能がないから夢見るのではないか。何も変わらないから、居場所を探すのではないか。 そうだ。居場所だ。 才能の欠片もないけれど、文章を書きたい者。