前回、ニュートンは、太陽系が混沌、すなわち今日カオスと呼ばれる状態にならないように神が常に手直ししていると考え、これに反対したラプラスが決定論的世界観を声高に主張したことをお話ししました。 今回は、まずニュートンとラプラスの説を復習してから、カオスが見いだされた経緯を概説してカオス理論の要点を説明しましょう。 【今回のワンポイントメッセージ】 ニュートンの運動方程式のような単純な法則に従う系でカオスが起きることが分かり、決定論が崩壊した。 否定されたラプラスの決定論 ニュートンは、9つの惑星を持った太陽系の運動を各惑星が1つだけ太陽のまわりを回っていると仮定して、その軌道を計算しました。惑星は太陽の方向に万有引力を受けるので楕円軌道を描きます(図1)。そこでニュートンは、9つの惑星の楕円軌道を単純に足し合わせて太陽系を構成しました。惑星の質量は太陽より非常に小さいので、惑星同士に働く万有引
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