猿を笑えない人たち:高山正之(ジャーナリスト) 2010年3月12日(金)23:00 昆虫の世界はメスが圧倒的に偉い。 竹内久美子はその例に、ガガンボモドキの生態を紹介している。 この肉食昆虫のオスはメスの気を引くためにおいしそうな獲物を狙う。みごと仕留めると、枝にとまってその獲物をぶら下げる。 何匹ものオスがそうやって獲物を誇示するなかをメスが飛び回り、いちばん大きく、おいしそうな餌を選んで止まり、食べ始める。 その間、オスはメスと交接ができる。貧相な餌しか取れないオスは一生、メスに見向きもされず、したがって自分の子孫を残すこともできず、童貞のまま死んでいく。 メスの選択は正しい。大きくおいしい餌を取れるオスは逞しい生活力がある。そういう強い遺伝子をもったオスの遺伝子を受け継げば、子孫のさらなる繁栄が図れる。 メスは種の遠い将来を見据えた崇高な意図をもっている。これに対してオスの発想は違