あすへの話題 記憶の「編集力」を鍛えよう 脳科学者 茂木健一郎 アタマの良し悪しと言うと、真っ先に思い浮かべるものの一つが記憶力である。 記憶力を良くしたい。そんな願いは、学校の試験に苦しめられている学生はもちろん、学校を卒業して長い年月が経った大人にとっても切実なものだろう。特に、そろそろ物覚えが悪くなってきたと感じる年代の人にとって、記憶力をどうやったら維持できるかは大いなる関心事に違いない。 ところで、脳の記憶のシステムの本当の素晴らしさは、世間で言う「記憶力」とは少し違う点にあるということをご存じだろうか? 覚えたことを単純に再現するだけなら、機械にでもできる。実際、単純な再現力で比較すれば、人間の脳はコンピュータにとても敵わない。 人間の脳だけが持つ素晴らしい能力は、自らの記憶を編集して、新しい意味を見いだす点にこそある。例えば、何回か会って話をすると、次第にその人柄が判って