ナショナルジオグラフィック日本版では2006年5月号に特集記事「ユダの福音書を追う」を掲載する。セカンドステージの読者に,この記事の内容の一部を,写真とともに紹介する。 エジプトの砂漠で発見された約1700年前のパピルス文書の冊子は,古美術取引の迷宮に姿を消した。ある古美術商の手に渡った後,米国ニューヨーク州ヒックスビルにある銀行の貸金庫に16年間も放置されたのだ。スイスのコプト語研究者ロドルフ・カッセル博士が写本を目にしたのは,発見からおよそ30年後。パピルス文書はすでにぼろぼろの状態で,そこに書かれたメッセージは永遠に失われる寸前だった。 1700年の眠りから覚めた,パピルス文書の写本の最終ページ。最後の行の文字は,『ユダの福音書』と読み取れる。朽ちかけたパピルスの束にコプト語で記されたこの文書は,これまで「裏切り者」の代名詞だったユダこそ,実はイエスの一番弟子だったと物語っている。