2019年末、まだ感染騒ぎが起こる前の話だが、法事で5年ぶりに帰郷した。 珍しく親戚も集まるというので記念写真でも撮ろうと思いM6を鞄に詰めて新幹線に乗り込んだ。在来線を乗り継いで故郷に到着したのは夜半過ぎ。人は誰もおらず閑散としたホームに降り立った時、凛とした冷たい空気が都会生活に慣れた私に冬の厳しさを懐かしさとともに伝えた。帰ってきたのだ。 翌朝早くに起きて従兄弟と実家周辺などを散歩した。ライカで写真を撮っていると従兄弟がそれに興味を持った。私もフィルムカメラの、特にライカの魅力を伝えることはまんざらでもない。それに彼が小さい頃から兄がわりに面倒をみていたので、好奇心旺盛な性格はよく分かっている。 法事も無事に終わり、滞在最終日に従兄弟と少し外出して近所のカフェのオープンテラス席でビールを飲んだ。たわいもない会話で盛り上がる。 その日は初冬にしては暖かく穏やかな天気で、田舎特有の澄み渡