数回にわたり1800年代に生きたエドガー・アラン・ポオと、スティファヌ・マラルメの詩論を見つめました。 今回と次回は五百数十年ほど時を遡り、イタリア・ルネサンスの先駆けとして生きたダンテの『俗語詩論』の頁をめくります。数百年の時間は芸術、魂の本質的な響き合いの妨げにはなりません。 今回はこの詩論の全体像を、次回は詩についての鋭い論述を中心に、感じとり考えます。ポオが詩論で「この世で最も詩的な主題」として「佳人の死」を挙げた頭の片隅には、この世で結ばれることなく亡くした最愛の女性ベアトリーチェへの愛の詩集『新生』、ベアトリーチェへの魂が込められた詩篇『神曲』を書き上げたダンテが必ずいたと私は思います。(私は野間宏の小説でベアトリーチェの名を知りました。ダンテの詩そのものについても、いつか書きたいと思います。) 訳註者の岩倉具忠の解説が要約して教えてくれるように、『俗語詩論』第1巻でダンテはま