ルクレティウスの『事物の本性について―宇宙論』から、詩を考える試みの2回目です。今回は、思想と信仰と詩について思うことを記します。 ルクレティウスはこの本で、真理と確信する思想を読者に教えるために、その思想の根本概念で事物を捉え描きなおし説明します。だからこの本は、宇宙を理性で解読して原子論の正しさを証明しようとする論文ともいえます。 そのことは、たとえば彼の恋愛の捉え方に顕著に現われています。恋愛をその渦中に生きて心で歌うのが詩ですが、彼はそうするのではなく、男女の恋愛心理や行動を外側から理知的に観察します、まるで動物行動学のような記述です。 宇宙そのものの捉え方についても、現代の科学のような、素粒子物理学や原子核物理学が放射性元素プルトニウムや放射性同位体セシウムを説明するのに通じるものを感じます。人間の理性と理知により宇宙は解き明かせるという科学信望、宇宙と照応する体系を記号と数式で