歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめなおしています。今回と次回は古代の物語歌をとりあげます。 今回の物語は古代の同母兄妹の悲恋物語です。 ☆作品(原文と訳文) 天皇崩(かむあが)りまして後、木梨軽太子(きなしのかるのみこのみこと)、日継(ひつぎ)知ろしめすに定まれるを、 未だ位に即位(つ)きたまはずありし間(ほど)に、その同母妹(いろも)軽大郎女(かるのおほいらつめ)にたはけて、 歌日たまひしく、 あしひきの 山田を作(つく)り 山高(やまだか)み 下樋(したび)を走(わし)せ、 下訪(したど)ひに 我が訪ふ妹を 下泣きに 我が泣く妻を 今夜(こぞ)こそは 安く肌触れ。 <訳: あしひきの)山田を作り、山が高いので水を引くために地下水道を走らせる。 そのようにひそかにわが想う妹、こっそり泣いてわが慕う妻を、今夜こそ心安らかに 肌触れたことよ。> 此は志良宜(しらげ)歌なり。 また歌