『紫式部集』から彼女らしさを感じる歌を選び出しました。 ゆたかな歌物語『源氏物語』に織り込められた創作歌794首は除いた、彼女の自選だとみなされている、約百数十首の私家集です。ここには七首のみ選びましたが、彼女の歌の特徴が現れていると思います。 彼女の和歌は、まっすぐです。ストレートに思いを綴っています。心のみ見つめた内省そのものの歌もあります。 基調音は悲哀の情感です。いのちの憂さと悲しみに揺れ、花開いた、あはれの歌です。 『源氏物語』の豊かに揺らめく大河とおなじ基調音にふるえる滴のようです。ああ、という声になるかならないほどの彼女の吐息が心を染めます。 複雑な修辞もなく、常識的な穏やかな言葉を選び、古歌の知識も理知と機知のひらめきも見せびらかすこともないので、独立した和歌として、歌人として高く評価されなかったのは、わかる気がします。 でも、私はこれらの歌を読むと感動し、いい歌、好きな歌