本居宣長(もとおりのりなが)の『紫文要領(しぶんようりょう)』を通して、『源氏物語』をより深く読み感じ取ろうとしています。引用文の出典は、『紫文要領(しぶんようりょう)』(子安宣邦 校注、岩波文庫、2010年)です。章立ての「大意の事」と「歌人の此の物語を見る心ばへの事」から任意に引用(カッコ内は引用箇所の文庫本掲載頁)しています。 5回目の今回は、この著書での宣長自身の言葉を、日中戦争、太平洋戦争時に喧伝された本居宣長の姿と照らし合わせて、その虚実を見つめ、戦争と文学者について考えたいと思います。 日中戦争、太平洋戦争時の本居宣長の虚像 日中戦争、太平洋戦争の時代の文学者について以前ブログで考えました(高村光太郎 胸中から迸り出る言葉)。そこで紹介した次のホームページ「鳥飼行博研究室 戦争と文学:文学者の戦争」に戦時中の本居宣長像が記されています。 本居宣長はその時代、愛国心を高めるため