中世に咲いた歌謡、『梁塵秘抄』の今様のうち、「四句神歌(しくのかみうた)・雑(ぞう)」に集められた民衆の心の歌に前回は耳を澄ませました。 今回は、心のより深い低音部から紡ぎだされた仏教信仰の歌、「法文歌(ほうもんのうた)」を聴きとります。学んだ三つの出典から心に響いた言葉 を紡いで記します。 私は大阪育ちですので幼少期から奈良や京都の寺院を訪ねる機会は多くて親しみも感じてきました。 でも今回法文歌にふれて気づいたことは、日本の仏教を知らない自分でした。 ばらばらに名だけしか知らない、観音さま、お地蔵さん、阿弥陀如来、普賢菩薩、弥勒菩薩、薬師如来。寺院で親しんではきたけれど、込められた信仰は知らなかったんだと、改めて思います。これからもっと知りたいと思います。 私はこれまで古代インドのウパニシャッドや原始仏典、ジャイナ教など、信仰の源にあるものが真理かどうかということばかりに拘り目を奪われて