式子内親王(しょくしないしんのう、「しきし」「のりこ」とも。)は、新古今集を代表する女性歌人です。 彼女の歌の世界にはじめて入り込もうとした二十代の頃、私には彼女の歌の良さがまだ分かりませんでした。彼女が亡くなったのと同じくらいの年齢となった今、彼女の歌はとても心に響き、心の重なりを深く感じとれるようになりました、嬉しいことです。 式子内親王の生涯に華やかさはなく、不遇だといえます。後白河天皇の皇女として生まれましたが十代は賀茂斎院として賀茂神社に奉仕し、その後も生涯独身でした。親しい者の相次ぐ死を見送ったあと出家しています。(法然からの手紙が残っています。) 和歌の師は千載集選者の藤原俊成で、歌論書『古来風躰抄』は彼女に捧げられたもの、俊成の息子の藤原定家との交流もありましたが、当時の歌の世界で彼女は決して華々しく目だった存在ではなかったようです。 私は今、新古今集の時代に、天性の詩人と