◇五百旗頭(いおきべ)真・評 『倫理的な戦争--トニー・ブレアの栄光と挫折』 (慶應義塾大学出版会・2940円) ◇信念ゆえに引き裂かれた指導者の軌跡 久しぶりに感銘をもって読んだ国際関係の書である。感銘を覚えるのは、われわれが国際関係と日本外交について直面している主要問題について、本書がトニー・ブレア英国首相の思考と軌跡を通して深い良質の考察を行っているからである。 たとえば、日本外交の主要問題はアメリカとどう交わるかである。米国は圧倒的重要性を持ちながら、必ずしもこちらに向き合って行動してくれず、一方的思い込みからベトナム戦争やイラク戦争に走ったりする。そんな時、同盟国は距離をとって批判的にたしなめるべきか、あえて懐に飛び込み同行しつつ影響力を保つべきか。後者を純度高く実践したのがブレア首相であり、ついで小泉純一郎首相であった。 本書の著者はかつて『外交による平和』(有斐閣)を著して、