『ライ麦畑で捕まえて』『ナインストーリーズ』などで知られるJ.D.サリンジャーが死んだ。衝撃は大きかろう。それだけ影響力を持っている作家だったから。しかし、個人的なことを言えば、確かな喪失感はあるものの、しかし喪失感しかない。衝撃もない。ぼくもいっぱしに彼の全著作を読んだ人間であるし、強い影響を受けてもいる。かなり好きだ。だから悲しいかと言えば、まったくそんなことはないというのが正直なところで。自分の中でサリンジャーと言う作家と彼の書いた作品の数々がうまく結び付いていないのかもしれない。元々高齢で、ぼくが彼の作品にハマった頃には彼はもう森に引きこもって生きているのか死んでいるのかもわからない存在であった。そんなぼくからすれば、今更死んだと言われても、それ程の衝撃はない。ただ喪失感だけがある。 ただ彼が森でひっそりと生きているらしい、というのは漠然とした情報ながらも何だかよくわからない勇気を