武家とは異なり、町人同士の結婚は本人の意思で行うことができたが、中流以上の家庭では、相手はだれでもよいというわけではなかった。それなりに商売の規模や家の仕事内容、財産、家格といったものが配慮されたのである。そんな状況のもとで、世話をする仲人がいたりすると、見合いが行われた。見合いといっても、現代のように当人同士が顔を合わせて話をするというものではない。本当に互いを「見合う」、つまり容姿やしぐさを観察し合うだけだった。 見合いの使われる場所は、社寺の境内にある茶屋など、人がたくさん集まる場所にある店が選ばれた。浅草寺や上野寛永寺、両国の回向院などであった。それぞれの家が、家族で参詣に訪れた帰りの立ち寄ったというような偶然を装って、同じ店に入るというセッティングがよく使われた。 また裕福な商家などの場合、芝居見物をお見合いに使うことも。あったそれぞれの家が少し離れた桟敷席を予約しておき、芝居の