昨年夏からスタートした「ヤフーBB」のADSL(非対称デジタル加入者線)を用いたブロードバンドサービスは、孫社長にとって「最後の賭け」になるだろう。これまでのソフトバンクのビジネスは、商品や会社を右から左に流すだけで、華はあっても実がない〝虚業〟に近いものだった。巨額の有利子負債を抱えたソフトバンクには何よりも「現金」が必要である。失敗すれば「身売り」という選択肢すら現実的になってくる。 孫社長は、スピードネットの過ちを繰り返さないため、ヤフーBBの立ち上げでは周到な用意をした。それは、経営危機に陥った「東京めたりっく通信」の買収劇の舞台裏をみるとよく分かる。東めた社は、日本ではじめてADSL事業をスタートさせたブロードバンドの先駆者で、技術者集団が作り上げたベンチャー企業である。東めた社の元社長、東條巌氏が当時を振り返る。 「孫ちゃんが買収に関心を持ったのは、東めた社の経営危機が新聞で報