1:なぜ,性を語るのか 精神科を受診する女性たちを診ていると,性に係わる心の傷は珍しくありません。初診の時に語ってくれることは少ないのですが,何回かの受診の後,信頼関係ができてくると,受診のきっかけとなった症状(抑うつ,不安,精神的不安定など)の背後にある心の傷を話してくれます。レイプ被害(既遂であれ未遂であれ),痴漢被害,子供のころの性的虐待,性に係わって投げ付けられた侮辱的な言葉(「不感症」,「やりまん」など)・・・・。 こんな話を聞くにつれ,臨床医として性の問題を避けるわけにはいかないという気持ちになります。 心の傷,というほどではなくても,性に係わる悩みを抱えていながら,それを誰にも相談できなくて心が晴れないまま日々を過ごしている女性は珍しくありません。性について,特に女が性についての疑問や悩みをまじめに,だけど深刻ぶらずに語るのは今でもかなり難しいようです。しかも,性について無知