「アインシュテルング効果」とは,問題の解のうち最もなじみ深いものに脳が固執して,その他の解を無視してしまう頑固な傾向のことだ。この精神現象は1940年代から知られていたが,どのようにそれが生じるのかについて確かなことがわかったのは最近だ。チェスを指しているプレーヤーが定石にとらわれ,よりよい指し手の手がかりとなるマス目が目に入らなくなっていることが,目の動きを追跡する近年の研究によって示された。 再録:別冊日経サイエンス201「意識と感覚の脳科学」 著者Merim Bilalić / Peter McLeod ビラリッチはオーストリアにあるクラーゲンフルト大学の認知科学の教授で,独テュービンゲン大学のシニアリサーチフェロー。アインシュテルング効果に関する研究で,英国心理学会の2008年「優秀研究論文賞」を受賞した。 マクラウドは英オックスフォード大学クイーンズ・カレッジの名誉フェロー。オッ