日本を親米国にしようというアメリカの占領政策が功を奏したのか、日本国民は、当初の占領統治に対する戦々恐々の姿勢から、いつしかアメリカを救世主ととらえるように変化していった。それは占領初期の労働組合、共産党への寛容な政策が人々の心を和らげ、解放者アメリカの印象をもたらしたことも一因である。人々は「拝啓 マッカーサー元帥閣下殿」の夥しい数の手紙を送り、アイディアや意見をぶつけた。 そして、日本人はアメリカ人を「アメちゃん」と呼ぶようになった。ちゃん付けは親しみを表してはいるが、同時に、権威に対する些かの侮蔑も含んでいる。天皇を「天ちゃん」と呼ぶ人が出てきたのも同じ理由だ。黒人兵を「黒ちゃん」とも呼んだ。例を挙げれば日本人の複雑な気持ちが交じっていることは確かだ。 アメちゃんは、しかし、決して日本人と対等ではなかった。しかも、豹変する恐ろしい存在でもあったのである。戦後、世界の共産勢力は力をつけ