ドナルド・キーン氏の新刊『私と20世紀のクロニクル』(中央公論新社)をめぐって、平野啓一郎氏との対話は、21世紀の言語環境の変化へ広がった。 平野 最近、日本文学の読まれ方が変化しているという印象はありますか。 キーン 日本人には自虐傾向がずっとあって、「アメリカは日本に関心をなくし、今や中国文学に興味が移ったのではないか」などと言う人もいます。しかし、学ぶ人の数は全然減っていません。 平野 2003年にパリ第七大学に招かれる機会がありました。現地の日本文学の先生と話していると、実は最近、日本文学科に入学する生徒が右肩上がりで増えているそうです。 キーン フランスも、そうですか。アメリカでも今は、州立大学のような小さな大学でも一応、日本文学の講義を用意してあるようになりましたよ。 平野 ただ、僕の聞いた話では、学生の多くは漫画やアニメに興味を持って日本語を始めるらしい。2年に進学する時、か