世界初の「歯生え薬」の実用化に向けた研究が、日本のチームによって進められている。先天的に永久歯の数が少ない人に対し、薬を投与して歯を生やすことを目指した治験を2024年7月から始め、30年の実用化を目標とする。動物実験の段階だが、この薬を使って乳歯、永久歯に次ぐ「第3の歯」を生やすことにも成功した。歯生え薬は、歯の再生という新たな歯科治療を切り開くのか。 「歯を生やすのは歯医者の夢。大学院生の頃から、ずっとそのテーマに取り組んできた。絶対にできると確信がありました」。研究を主導する北野病院(大阪市北区)の高橋克・歯科口腔(こうくう)外科主任部長は、研究を始めた1990年代をそう振り返る。その決意から30年あまり。まもなく歯生え薬の治験開始という段階にこぎ着けた。 歯の数が生まれつき少ない「先天性無歯症」の人は、人口の約1%いる。特に6本以上の歯の欠損は遺伝が大きく関係している遺伝性とされ、