胡錦濤政権は国民に対して、「和諧(わかい)社会」(調和の取れた社会)づくりを呼びかけているが、「和諧」社会の定義は必ずしも明らかになっていない。 感覚的には、対立が少なく、そこそこ幸せな社会が「和諧」社会だろうと思われる。しかし、現実の中国社会を見ると、国民の不満が増幅しており、決して調和が取れているとは言えない。 実は、社会の調和が取れていることと、富の蓄積、すなわちGDPの成長とは必ずしも関係がない。日本は世界で2番目の経済規模を誇り、豊かさは世界トップレベルである。にもかかわらず、毎年の自殺者は3万人を超え、殺人事件も多発している。 古典的な経済学の理論は、もっぱら効率を追求することによってGDPの成長を目指すためのものである。1972年にイタリアのシンクタンク、ローマクラブが発表した『成長の限界』という論文は、近代経済学の理論がすでに限界を迎えていることを示唆していた。 今回の金融