どの分野にも領域にも、先人の積み重ねた努力や科学的な発見がある。決して華やかではない公務員の仕事にも、いぶし銀のように輝くストーリーが存在する。愛媛県内子町にも過疎化や高齢化が盛んに叫ばれる前から、現場で熱く奮闘し、冷静な目で地元の未来を考えてきた1人の公務員、岡田文淑がいた。 1940年生まれ、内子町にある子どもに恵まれなかった一家に養子として出された。高校を卒業後、地元の郵便局に臨時職員として勤めはしたが、仕事に魅力を感じず、すぐに退職。たままた公務員の試験を受け、合格。今でこそ、羨望の職である公務員だが、当時は銀行・電力・郵便局はおろか、農家よりも人気も給与も少ない職種だった。村に残らざるを得ない旧家の長男やぼんぼん、縁故採用がほとんどのなかで、岡田は試験採用第一号だった。 仕事はそこそこに組合の活動に熱中していたが、30歳のとき、新設された観光係に配属となった。能力を期待されての移