先日、仕事の関係で九段下の近くに行った。 昼食を取った後、私は何という気もなくぶらりと外を歩き出した。 暫く歩いてみると、道なりに沿って伸びる長い長い壁を発見した。 「あ、そうか、ここが―――」 そう、今や全世界から夥しい注目を浴びている建造物、靖国神社である。 私は靖国の境内に入ったことは何度かあったが、本殿の近くまで行ったことは無かった。 「せっかく時間があるのだし、ちょっと立ち寄ってみよう」 そう思った私は、道路を横切り、南門から境内に入った。 その日は平日の午後ということもあってか、人の入りはまばらだった。まばらではあるのだが、境内のそこかしこにはそれなりに人の姿があった。 南門を入って暫く歩くと、左手に大きな鳥居が見えた。その鳥居の向うには―――あの見慣れた、緑青色の屋根を掲げた靖国神社の拝殿が聳えていた。 鳥居をくぐって中に入ると、そこには人はほとんどいなかった。賽銭箱の前に来