にこやかにやってきた男性が放った驚く一言 38歳の男性は2カ月ぶりにカウンセリングにやってきた。毎月来談していた彼が1カ月間隔を空けたことをわずかに心配していた私だったが、部屋に入った彼を見て驚いた。これまで目にしたことのないデニム地の上着を羽織り、一度も見せたことのない晴れやかな表情をしていたからだ。 「何かいいことでもあったのでしょうか?」 私も思わず明るい口調になって、椅子に座るやいなや質問した。 「父が亡くなったんです」 「……ああ、そうだったんですか」 一瞬の沈黙ののちに、私はそう応えた。表情はできるだけ変化させないように努めながらである。このような場面は珍しいことではない。ある50代の女性は1年ぶりにカウンセリングに訪れたのだが、部屋に入って椅子に座るなり、発した第1声がそれだった。 「先生、やっと母が死にました」 朗らかな、まるで長年背負った重荷から解放されたかのような清々し
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